歯科用CTとは
3次元画像による診断を実現
歯科用CT（Computed Tomography：コンピュータ断層撮影）とは、歯科診療用に特化したCT装置のことです。
歯科用CTによって、お口周りの3次元画像や断層写真を短時間で得ることができます。
従来のパノラマ撮影（口の中全体を1枚のX線写真に撮影する方法）では、 X 線写真による２次元的（平面的）な診断しかできませんでした。
しかし、この歯科用 CT の導入により、神経や血管の位置や骨の厚みなどに関する「３次元情報」が得られるようになり、精密かつ高度な診療が可能になりました。
歯科用CTは、主にインプラント、歯周病、親知らず、埋伏歯、根尖病変などの診断と治療、および術後評価に用いられます。
歯科用CTの安全性
低被曝による高い安全性
歯科用CTで受ける放射線量は0.1mSv（ミリシーベルト）/1枚と、ごく低被曝です。
国際放射線防護委員会（ICRP）は、CTやX線撮影などによる放射線被曝量の限度として、平常時では「年間約1mSv以下」が理想的であるとしています。
この基準に照らすと、歯科用CTで受ける1回の放射線量は、平常時における一年間の理想的限度量の10分の1という低値です。
また、医科における放射線を用いた検査、たとえば胸部CT検査では6.9mSv/1回、胃のＸ線検査では0.6mSv/1回の被曝ですから（使用するCT装置や検査方法などによって多少変動します）、それらに較べて、かなり低いことがおわかりいただけるでしょう。
したがって、歯科用CTの安全性はきわめて高く、健康被害を心配する必要はまったく無いといえます。
歯科用CTがもたらす安全性
より正確な診断を可能にする3次元画像
歯科用CTでは、前述のように検査の対象がそのまま3次元画像として見えますので、より客観的で正確な診断が可能となり、ひいては的確で安全な治療が行えるようになります。
ここでCTがもたらす安全性の例を挙げたいと思います。
インプラントの埋入にあたって、神経や血管の走行位置に気を付けなければなりません。
と言うのも、血管をドリルなどで切ってしまうと思わぬ出血を、神経に触ってしまえば顎の痺れを、それぞれ招きかねないからです。
歯科用CTで、事前に神経や血管の走行位置がわかっていれば、そうした危険が避けられ、より安全な治療が行えます。
こんな治療の際に威力を発揮
前述のインプラント治療をはじめ、高度な歯科治療においては、術前の詳細な診断が不可欠です。
通常のX線撮影では2次元の情報しか得られませんが、CT撮影を行えば「3次元情報」が取得できます。
人の体は言うまでもなく立体構造をしておりますので、歯科用CTで取得した3次元情報は、診断と治療にあたり、とてもリアルで有用です。
歯科用CTは、以下に挙げるような歯科治療において、大きな役割を果たしています。
インプラント
インプラント治療では、顎骨に穴を開ける手術を行うため、埋入部位の骨の状態（質や厚み、高さ、形態など）や神経・血管の走行位置などを術前に知っておく必要があります。
とはいえ、これらは歯茎の奥深くにあるため、直接肉眼で見ることはできません。
しかし、歯科用CTを用いてインプラント埋入手術前にこれらの情報を把握できれば、綿密な治療計画を立てることができます。
より安全で的確なインプラント治療が行えるわけです。
さらには手術時間の短縮や術後の痛み・腫れの軽減にも効果が期待できます。
なお、歯科用CTによる撮影は術後にも行い、埋め込まれたインプラントや顎骨の状態を確認します。
歯周病治療
歯周病は、細菌感染によって歯を支えている骨が溶けていく生活習慣病です。
歯科用CTを使えば、骨の破壊の程度を正確かつ立体的に把握することができます。
これにより、骨の溶けた範囲や状態の診断がより正確に行えて、治療方針の決定に役立ちます。
親知らず
親知らずの位置や向き、また神経との位置関係が3次元的にわかるので、親知らずの抜歯が手際よく、しかも安全に行えます。
また、親知らずは埋伏歯（歯肉や骨の中に埋もれている歯）であることが少なくありません。
この埋伏歯の位置も精密に把握できるので、余計な歯肉の切開や骨の切削などが避けられます。
根管治療
歯科用CTを用いれば、歯根の先端部分の病巣を発見できます。
また根管を治療した後の状態も、従来のX線画像による二次元診断に比べ、より正確に把握できるようになります。
